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バリキャリ女の弱点 Page2

last update publish date: 2026-07-25 10:43:30

「――ただいま……」

 オートロック付きマンションのエントランスをくぐり、エレベーターに乗って五階の部屋に帰り着くと、私は誰もいない室内に向かって言った。当然のことながら返事があるはずもないのだけれど、これはもうクセのようなものだ。万が一返事があったとしたら、合鍵を渡してある私の両親もしくは姉だろう。……もしくは考えたくないけれど空き巣か。 

「……って、誰もいるわけないよね……。さてと、まずはシャワーでも浴びるか」

 昨夜の記憶はほとんどないけれど、多分あんな状態だったのならシャワーも浴びずに服を脱いで眠ってしまったのだろう。朝起きてからも、彼の部屋のシャワーをお借りするのは何だか気が引けるので遠慮した。シャワーを浴びるなら、誰に遠慮することなく裸になれる自分の部屋に帰ってからと思っていたのだ。

 寝室のクローゼットから替えの下着のセットと部屋着、バスタオルを出して裸になり、それほど広くないバスルームに飛び込んだ。蛇口を開いて少しめのお湯を浴びると、メイクがスルスルと落ちていく。こんなに簡単に落ちてしまうと、冴島くんの部屋からここに帰ってくるためだけにメイクしたのが何だかバカバカしくなる。でも、六本木という街にいたのに、そして電車に乗って帰るのにスッピンはやっぱりちょっとね……とも思った。

 先に石鹸をきめ細かく泡立ててメイクを完全に落とし、それから洗顔をする。この手間をしんだら、せっかく冴島くんが「キレイだ」と言ってくれたこの美肌はキープできない。

 それからアルコールの匂いが染みついた長い髪をシャンプーでキレイに洗い、トリートメントも念入りに。それをじっくり浸透しんとうさせている間に、ボディソープを泡立てた柔らかめのボディタオルで全身をキレイに洗う。肌が弱いので、私は硬めよりも柔らかめのタオルで優しく洗うようにしているのだ。

 全身の泡をお湯で洗い流したら、トリートメントも十分染み込んでいる頃合いなのでそれも洗い流す。最後に軽くブラッシングをして、もう一度全身に少し熱めのお湯を浴びてから上がった。

 冴島くんには「もうオバサン一歩手前だ」なんて言ってしまったけれど、私はスタイルだってそんなに悪くない……いや、むしろいい方だ。それはもっと若い頃の話ではなく現在進行形である。

 胸だって普通にDカップはあるし、ウェストはいい感じにくびれていて腰も高く、脚もそこそこ長い。身長は百六十センチと、これもまぁ平均くらいだろう。モデルかアスリートでもない限り、身長の高い女は男から「デカ女」とバカにされる。……まぁ、遺伝的に長身の家系に生まれついてしまったら、こればかりはどうしようもないかもしれないけれど。

 確かに、ルックスだけなら男受けしないこともないのかもしれないけれど。そこに洋服のセンスや化粧っ気がないことや、金属アレルギーであることなどの条件が追加されると男受けはガクンと悪くなる。そして、男顔負けにバリバリ仕事をこなしていることもプラスされるとなおさらだ。

「どうしてこうなっちゃったの、私……?」

 少し前の時代なら、「結婚適齢期」と言われていた二十五歳もとっくにに過ぎて売れ残りの年代。大学時代の友人の多くに彼氏がいて、中には結婚して母親になっている子もいるというのに、私にはいつになったら春がやってくるのだろう? 私はこのまま干物女として、仕事だけを生き甲斐にして生きていくのだろうか……。

「…………はぁぁ~~~~……」

 お先真っ暗な自分のこれからの人生を思い、私は途方に暮れた。冴島くんはどうやら私のことが好きらしいけれど、それだって一時の気の迷いかもしれない。どうしてこう、ネガティブな思考におちいってしまうのだろうか。

「…………考えるのやめよう。それより早く服を着て髪を乾かさないと湯冷めしちゃう」

 私はブンブンと首を横に振り、ネガティブ思考をさえぎった。濡れた全身をバスタオルで拭き、下着と服を身に着けるとドライヤーで髪を乾かし、汚れた下着とブラウス、ストッキングはドラム式洗濯機の中に放り込んだ。スーツは部屋に持って行って、クローゼットにハンガーでかけておく。

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